開発秘話
現状、食べるのに困り始めた方は介護食を食べるのが一般的です。介護食とは、ミキサーでどろどろにして元の形がわからないもの、もしくはもともとやわらかくしてあるものを食べてもらうのが一般的だと思います。でも、人生70年80年生きてきた中で、自分が食べたいのは、どろどろにした介護食ではない、お肉料理、野菜料理、其々家庭の味、慣れ親しんできた味を一緒に同じモノを食べたい。
ですが、一人食べにくい方がいらっしゃるとミキサーでどろどろにしたものを食べさせていただかなくてはいけない。お食事を作る側、食べる側、それぞれの想いがかなわない環境が今の介護の食の環境だと思います。
そこで・・・2016年6月に「こんな商品があったらいいな~」の想いを新規事業のビジネスコンテストに応募したのがきっかけで、誕生したのが【やわらか食家電 delisofter(デリソフター)】になります。
私たちと同じ思いの方が世の中には必ずいらっしゃると考えパナソニックなら社会貢献事業が必ず出来ると立ち上がる決意をしたのです。
“鍵は現場の声“
事業アイデアをブラッシュアップすべく、次の検討会に向けて取り組みしたのは”現場の声“を集めることでした。介護現場ではどの様なお困りごとがあるのか?知り合いの医師、病院関係、介護施設などをまわりアンケートを実施したばかりではなく、自宅近隣の一般家庭を何軒も訪ねました。
紹介者もなく突撃訪問した時は怪しまれお断りされ、心折れそうにもなりながら自分達以外でもデリソフターを必要としてる人がいると信じ、活動を続けさらに安全性を高める為に病院の医師にも積極的にヒアリングを行い、専門家の意見をもとに嚥下障がい者も安全に食べられる食材の軟化レベルを追求しました。
また、2024年現在は高齢者の方だけでなく、食事を楽しむことが難しかったお子さんたちにも多くデリソフターを通して美味しい食事を食べていただいています。これからも子どもたちの笑顔を守りたい、家族みんなで食べれるインクルーシブな食事を広げていきたい。そんな想いを持って活動していきます。
デリソフター起案者 水野
開発者の想い
デリソフターをなぜ作ろうと想ったのか・・・
起案者お2人の始まりのエピソードです。
デリソフター起案者の水野は、鹿児島県の離島徳之島にて育ち、幼い頃から大家族の中で過ごしていました。当時、料理は母の手作りが基本で、家族みんなで食事をするのが当たり前の環境。祖母も同居しており、それぞれの家庭の味があると家庭料理をとても大切にし、人生最後まで自分自身の口から慣れ親しんだ家庭料理を喜んで食べる方でした。
116歳まで長生きした祖母(徳之島の本郷かまどおばあちゃん)の口癖は
【食べる喜びは生きる喜び】
生前語り続けていたこの言葉が、今でも印象強く心に残っており、食事は生きる上で大切な喜びだと、大切なことを教えてもらいました。
【家族皆が同じ食事を食べられることの喜び】
この想いを胸に、やわらか食家電デリソフター開発への道を一歩踏み出しました。
共同起案者の小川は、両親の介護経験を持ち、実際に嚥下食作りで困難さを覚えていた家族です。在宅介護中、父親が高熱で入院し、ある日突然、嚥下障害ですと病院で説明を受けました。その後、退院時には普通の食事が食べられず、自宅で嚥下食を作ることに。
「こんな食事食べられるか!」と一生懸命作った嚥下食を父親が食べることを拒否する日も少なくありませんでした。
日々、在宅介護を行う家族の負担や不安を強く感じ、特に介護食作りはとても負担が重く、心が折れそうになる日も・・・
楽しいはずの食事が苦痛になっている嚥下食作りを、食べる側も介護する側も楽になるものを作りたい!と想いが強くなっていきました。